学徒出陣で出兵しソ連に抑留され帰国した筆者。『戦中派』にも引用されていたまさに戦中派ど真ん中世代。本書は戦後20年を経た頃に書かれたもの。「アイツが死んで、オレが生きた、ということが、どうにも納得できない」(安田 2021、39)という気持ちを抱え続け、「戦争体験を伝えることが、ぼくたち世代の義務・責任であるのか」(安田 2021、120)と常に疑問を持ち続ける。「安田にとって戦争体験とは、断片的で矛盾含みなものの集積であり、したがって単一の意味や物語に「抽象化」「一般化」できるものではなかった」(安田 2021、282)という解説の通りであろう。人間味あふれる人間が戦場で非人間的になる、そんな戦争体験ひとつとっても単純な意味づけは不可能なのだ。
安田武、2021、『戦争体験──一九七〇年への遺書──』、筑摩書房。

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