ひょんなきっかけでアメリカで開かれる原子力に関する会議に参加することになった広島生まれ福島在住の筆者。会議の場所は、かつて原子炉があり今は廃炉作業中のハンフォード。長崎に投下されたファットマンのプルトニウムが生産された場所でもある。会議に集うのは、原子力利用は科学的勝利と信じて疑わない本場アメリカの原子力ムラの面々。福島の実情など関心領域外だ。不得手な英語と不味い食事に苦しみ、それでも数少ない理解者に励まされながら会議での講演をおこなう。珍道中のような可笑しみと異国での一期一会の愛情が感じられる読後感。その地に、戦争末期日本がアメリカに飛ばした風船爆弾の資料が展示されていたエピソードには少し驚いた。やはりアメリカとしては本土攻撃を受けた稀有で特筆すべき出来事だったのだな。
安東量子、2022、『スティーブ&ボニー──砂漠のゲンシリョクムラ・イン・アメリカ──』、晶文社。

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