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岸本佐知子『死ぬまでに行きたい海』

映画『遠い山なみの光』

当然のことながら、戦争体験は、それぞれの人が遭遇した時間、場所、境遇などによって千差万別だ。ひとつひとつは個人的な体験に過ぎない。戦争に限ったことではないが、体験の記憶は、本人の認知、感情によって後から形作られる。そのなかに事実でないことが紛れ込んでも何ら不思議ではない。主人公の長崎での被爆、戦後の貧困と差別、夫の無理解。その夫は戦場から復員しているがその体験は語られない。イギリスで生まれ育った娘はその母から戦争体験を聞き出そうとする。心に奥深く沈む過去は、語ることも聞きだすことも難しい。たとえ聞きだせたとしても、果たして心の内を理解できるのか。歴史を語り継ぐことの難しさの一端でもある。実に文学的で、深い余韻を感じた作品。


監督:石川慶、2025、『遠い山なみの光』
映画視聴日:2025年9月17日
映画館:TOHOシネマズ池袋

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