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水木しげる『水木しげるのラバウル従軍後記──トペトロとの50年──』

ニューギニアのラバウルで、歩哨中敵の爆撃により左腕を失った水木しげる。原住民トライ族と交流が生まれ、トペトロという名の少年と仲良くなる。戦後日本に復員するも貧乏暮らしが続く。戦後20年余りが過ぎた頃、ようやく妖怪マンガが評価されるようになり、ラバウルを再訪。幸運にもトペトロと再会を果たす。以降、何度もラバウルを訪れて親交を深める。そのトペトロの死後、現地で葬式を上げるまでの50年を、マンガや写真とともに綴った本。地獄としか例えようのない戦争のあった土地で、飄々と相手の懐に入って信頼関係を築いていく稀有な物語。水木はそこに意味も目的も求めない。まるで妖怪に導かれたかのように語る。「私はその何もない無意味な交流が面白かった。人生そのものがだいたい、何もないのかもしれない」。

水木しげる、2022、『水木しげるのラバウル従軍後記──トペトロとの50年──』、中央公論新社。

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