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荻上チキ・栗原俊雄『大日本いじめ帝国──戦場・学校・銃後にはびこる暴力──』

戦時下のいじめに特化し、様々ないじめ証言を引用しながら、あの戦争における暴力構造を読み解く内容。いじめという言葉では収まりきれない暴力の数々はどれも極めて陰惨なものだ。挙国一致で敵国と戦っているはずなのに、内部での暴力が蔓延り、それに因る死者まで出している。なんとも醜く、愚かなことであろうか。「社会全体で、特定の精神に準じなくてはならないとする集団規範は、その精神から逸脱しているとみなされた者への攻撃を伴う」「スケープゴートを共有することでまとまろうという集団風土は、いじめを助長しやすい」(荻上 2025、72)。軍国主義と同調圧力がセットになって人々に浸透していったその先にいじめや暴力がある。「民間人の補償が行われない中で、戦争被害は個人の問題に矮小化され続けた」(荻上 2025、207)。戦後80年たっても戦時のいじめや暴力を些細なもの、仕方ないものと許容する空気が残っているのではないか。戦時下のいじめは過去の終わった話ではない。

荻上チキ・栗原俊雄、2025、『大日本いじめ帝国──戦場・学校・銃後にはびこる暴力──』、中央公論新社。

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