日本軍山西省残留問題の当事者、残留兵だった奥村和一を追ったドキュメンタリー。戦後も戦った日本兵奥村は、その真相を究明しようと猛進する。国共内戦への参戦命令は第一軍の澄田𧶛四郎(らいしろう)中将と中国国民党軍の閻錫山(えんしゃくざん)との密約によるものと思われるが、明確な資料も残されておらず、存命だった側近も口を閉ざす。残留兵が戦っている裏で、澄田は配下の兵士を置き去りにして、閻錫山の力を借り極秘裏に日本に帰ってしまい、A級戦犯の裁判を免れている。日本軍幹部の悍ましく醜悪な自己保身の姿に言葉を失う。一方の奥村自身もその戦争で中国の罪のない民間人を虐殺した加害者であったわけだが、その葛藤も随所で激しく表出する。全編で理不尽と不条理に埋め尽くされている。
監督：池谷薫、2006、『蟻の兵隊』
映画視聴日：2025年8月14日
映画館：ポレポレ東中野
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