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栗原俊雄『戦艦大和──生還者たちの証言から──』

アニメ『宇宙戦艦ヤマト』を観たことがない。同世代には人気の作品なのだろうが興味が無い。これに限らず映画などの影響もあってか、戦艦大和は、過去の栄光の象徴、ナショナリズムを惹起するコンテンツとなっているようだ。史実は正しくおさえなければならない。「水上特攻」で沖縄に向かった大和は、1945年4月7日「坊ノ岬海戦」でたった2時間で撃沈。約4,000人が死亡した。護衛の飛行機も無い状態での無謀な作戦だった。「「特攻」という言葉に酔い、非合理的な戦いを強いた海軍首脳部」(栗原 2007、126)は、何の責任もとらず嘘の戦果を大本営発表する。これが「民族の誇り」なのか。この作戦の端緒を開いたのは他ならぬ昭和天皇だったのだが、その天皇は戦後1946年に「全く馬鹿馬鹿しい戦闘であった」と側近に語っている。死んだ4,000人の生命を何と思っているのか。開いた口が塞がらないとはこのことだ。「成功の見込みがほとんどない作戦に投じられた大和を、軍事力増強に国力を傾けて勝算のない戦争に突き進んだ時代の象徴としてとらえることもできる。大和は、見る者の歴史観を映す鏡である」(栗原 2007、213)。

栗原俊雄、2007、『戦艦大和──生還者たちの証言から──』、岩波書店。

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