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柴崎友香『週末カミング』

沖縄戦展

あの戦争末期、沖縄では県民を巻き込んだ地上戦が行われた。県民の4人に1人が死亡したと言われる。この展示では7人の証言が並ぶ。沖縄戦と一口に言っても、その人のプロファイル、辿った地域、遭遇した体験によって、見えていた景色は一様ではない。しかし、遍在する死に取り囲まれた壮絶な状況に置かれていたことは同じだ。近藤一さんの証言。彼は最初は中国戦線に送られた歩兵だった。中国においては現地民間人相手の加害の経験もする。その後、あの対馬丸に乗船して沖縄に移動。米軍が上陸する中で、武器も無く逃げ回るような戦闘に加わる。壕に逃げ込んだ住民を追い出したことについて、彼は「沖縄の人を守るためにやった、日本軍は悪くない」と強く主張する。これもその人の立場によって認識が異なる一例だと思う。兵隊は上官の命令に従って行動するまでだが、結果として、軍は住民を守らなかった。彼は最終的に米軍捕虜になる。米軍兵士に見つかった時、彼は殺されると思った。脳裏に浮かんだのは中国で捕虜を殺害してきた自らの経験。しかし米軍兵士は彼に水と煙草を与えたという。戦争の両面、加害と被害を彼は体験したのだ。戦争を一括りにして語ることは不可能だ。だからこそこういう個々の戦争体験を知っていくことが重要なのだろう。



浅草公会堂
訪問日:2025年6月13日

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