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柴崎友香『週末カミング』

中村文則『自由思考』

作家デビューした2002年から2023年までの、様々な雑誌や新聞に掲載されたエッセイが収められている。デビュー当時の文章は、自意識過剰気味、明け透けで取りとめのないものが多い印象。しかし、日本の将来とも思しきディストピア小説『R帝国』を持ち出すまでもなく、同時代の社会に対する歯に衣着せぬ物言いは健在だ。「雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ、東に被害者があれば、君が悪いと言い、西にセクハラがあれば、女性が悪いと言い、南に捕まったジャーナリストがあれば、自己責任と言い、北に声を上げる芸能人があれば、生意気だと言い、強い政権には絶対怒りは向けないが、芸能人の不倫には目をむいて怒りを覚えるような、そういう者に、私はなりたい」(中村 2024、237)。2019年に新聞に寄稿された文章だが、実に痛烈な皮肉が効いている。

中村文則、2024、『自由思考』、河出書房新社。

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