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柴崎友香『週末カミング』

映画『東京大空襲 CARPET BOMBING of Tokyo』

全編にわたり、大空襲を体験した数十名の証言が散りばめられ、生々しい実相が浮かび上がる。焼夷弾だけでなく、艦載機による機銃掃射もおこなわれ、その艦載機に乗る米兵と目があったと証言する人もいた。文字通り命からがら逃げ回り、かろうじて生き残ったが、戦争が終わっても苦難は続く。親を亡くした戦災孤児であれば尚更だ。国は彼らに何の補償もしていない。そればかりか、大空襲を指揮したカーチス・ルメイに、戦後の日本はあらぬことか勲一等の叙勲までしている。奴隷根性ここに極まれりだ。あの時の凄惨な記憶から、未だに言問橋を渡ることができないと語った女性が、橋の袂に立って空を飛ぶ飛行機を見上げるシーンは印象的だ。終盤その女性が映画の完成を待たずに亡くなったことが伝えられる。体験者が不在となる時代は間近に迫っているのだ。


監督:松本和巳、2025、『東京大空襲 CARPET BOMBING of Tokyo』
映画視聴日:2025年3月25日
映画館:シネリーブル池袋

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