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麻田雅文『日ソ戦争』

アジア太平洋戦争の史実の中で、ソ連との交戦について詳しく語られることは多くなかった。日ソ戦争は、1945年8月8日に始まり、8月15日の後、9月上旬まで続いた。シベリア抑留、中国残留孤児、北方領土という戦後に長く残された問題の出発点でもあったことを考えると、今まであまり焦点が当たっていなかったのが不思議にも思える。ヤルタ会談でルーズベルトとスターリンがソ連参戦の密約を交わしていたことは有名だが、それを知らずに一撃講和論を唱え、ソ連の仲介を期待していた日本の愚かさ。トルーマンとスターリンの判断次第では千島列島をアメリカが所有し、ソ連が北海道に侵攻する可能性すらあったことに驚く。北方領土問題にアメリカが何の言及もしてこなかった理由もこうした経緯があるからなのか。そしてスターリンはこの戦争を日露戦争の復讐と意味付けて正当化していた。その歴史認識は今のロシアにも受け継がれているような気がする。

麻田雅文、2024、『日ソ戦争』、中央公論新社。

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