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柴崎友香『週末カミング』

映画『226』

1936年(昭和11年)2月26日に発生した「二・二六事件」がほぼ史実に沿って描かれている。しかも大物俳優が勢揃い。映画とはいえ、決起した陸軍青年将校たちの狂信的で凶悪な行動に身震いする。立て籠もる山王ホテルの様子など当時の風景と異常な空気感が伝わってくる。奉勅命令が下り決起部隊は逆賊とされ鎮圧されてしまうのだが、肝心の昭和天皇は映画に一切登場しない。おそらく映画が作られていた時期は昭和天皇の深刻な病状が伝わってきていたであろう。そして公開されたのは亡くなった1989年、たとえ後ろ姿でも登場させるのは難しかったと推測される。ただそのためか鎮圧過程が分かりにくい印象は否めない。また、将校が、我々が正しかったことは後の歴史が証明してくれる、というふうなことを言い放つシーンや自決するシーンなど、見ようによっては彼らを美化しているようにも映る。まあもはやこの時点で、このクーデターを鎮圧した統制派も含め武力で権力や秩序を左右する軍国主義に染まってしまっていたわけだが。



監督:五社英雄、1989、『226』
映画視聴日:2025年2月28日
映画館:新文芸坐

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