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柴崎友香『週末カミング』

映画『異邦人』

アルベール・カミュの『異邦人』を読んだのは高1の時だった。それ以降自分の読書傾向はガラッと変わった。カミュの他の作品を読んだのはもちろん、粗雑な表現だが、哲学的、あるいは社会性のあるものに食指が動くようになった。純文学指向が強まった。それだけこの作品には自らの内面を切り開く新しさを感じた。

この小説が映画化されていたことを知らなかったのはある意味で幸運なことだった。原作にとても忠実に作られている映画であることはよく分かった。しかし、高1の時に小説を読むのと同じタイミングで、もしこの映画を観ていたら、『異邦人』という小説は自分にとって特別な契機を与えるものにはならなかった気がする。原作に忠実に演じているにも関わらず、スクリーンで俳優が演じるムルソーには違和感を禁じ得なかった。小説を読んで広がるムルソーのイメージは、もっと虚無的で厭世的で、無機質な存在だった。それ故に強く惹かれたのだった。


監督:ルキノ・ヴィスコンティ、1967、『異邦人』
映画視聴日:2025年2月10日
映画館:ユーロスペース

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