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吉田裕『続・日本軍兵士──帝国陸海軍の現実──』

待ち望んでいた『日本軍兵士』の続編。前作では日本軍の夥しい戦病死や餓死、食料や物資の欠乏、あまりに無残な兵士の実像を知り衝撃を受けた。本作は、明治の時代まで遡り陸海軍の兵士の実態を明らかにする。日中戦争以降アジア太平洋戦争の終結まで、戦没者の実に6割が戦病死という。それは前線の兵士に極端な負担を強いる日本軍の人間軽視の体質に因るものが大きいと指摘する。この調査研究を阻むのは残された史料が少ないこと、なかでも日本政府が様々な戦時の資料を残していないことが大きい。また日中戦争以降、臨時軍事費という予算の細目を示さない特別予算で戦費を増大させていたことも問題を見えにくくしている。これら、公文書の保存と情報開示、細目が不透明な軍事費の増大という問題は、80年を経過した現代でも同様の問題を抱えているのではないか。

吉田裕、2025、『続・日本軍兵士──帝国陸海軍の現実──』、中央公論新社。

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