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太平洋戦争開戦時に20歳未満だった女性27名のエッセイが収録された一冊。短い文章の中に、戦時中や終戦直後、少女たちの視線から見えた日常とその時の感情がありありと伝わってくる。そして、戦後、時を経て当時を振り返る視点が交差する。彼女たちの多くは、戦時中は軍国少女として育てられた。女子挺身隊という制度の下、軍需工場に動員された経験をもつ女性も少なくない。詩人の新川和江は特攻機に取り付ける部品を作る工場、脚本家の向田邦子は風船爆弾の部品を作る工場に動員されていたという。作家の佐藤愛子の一節に心が揺さぶられる。
人と人が分かれるとき、「サヨナラ」をいうものだと私たちは思っている。しかしよく考えてみると「サヨナラ」といって別れることが出来る別れは倖せな別れだ。戦争の頃、私たちは戦争に行く人に向かって「サヨナラ」ということが出来なかった。何か月か後には、死んでしまうかもしれない人との別れに「サヨナラ」はあまりにむごい響きを持っているように感じられた(佐藤 2021、27)
中央公論新社=編、2021、『少女たちの戦争』、中央公論新社。
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