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柳美里『南相馬メドレー』

鎌倉から南相馬に転居した作家の、2015年から4年間の日々を綴ったエッセイ。南相馬は爆発事故を起こした福島第一原発から25キロしか離れていない場所。かつての住民の多くは避難先から戻ってきてはいない。綴られるのは、様々な人たちとの出会い、息子の成長、昔の記憶。そして、この地にブックカフェを開店し、劇団を作る。書き手の心の高鳴りや揺らぎが静かに伝わってくるようだ。

大切な人の死は、遺された人の心に落ち、悲しみの波紋を広げながら遠ざかっていきますが、わたしは、その波紋を消したくありません。その人が大切ならば、その人を失った悲しみもまた大切なのです。(柳 2020、235)

言葉は、言葉にならない沈黙によって支えられている。(柳 2020、243)

柳美里、2020、『南相馬メドレー』、第三文明社。

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