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衆院選挙を目前にしてタイムリーな一冊。識者たちが日本の選挙について、データを元に様々な角度から分析を試みた内容。中心となる論点は「なぜ自民党が強いのか?」である。自分が今まで漠然と感じてきたことを言語化してもらったような気にもなる。小選挙区比例代表並立制に最適化した戦術が自民党の強さ。自民党が単独過半数を得ることができているのは「公明党との選挙協力、野党の分裂、組織票の存在(とその効果を高める低投票率)、一票の価値が高い非都市部の小選挙区での強さ、自民党への消極的支持」。「今後もこれらが続くかぎり、自民党は有権者が政治に不満を抱いていようとも、選挙で勝ち続ける可能性は高い」。野党がまとまれない理由として「衆議院の多数代表的な小選挙区制がもつ野党共闘への『求心力』が、比例代表制の『遠心力』によって弱められるという問題」(飯田 2024、37)があるという。正鵠を射た指摘であろう。疑問を感じた分析もあった。「党派性の影響をたくさん受ける、一方で社会レベルでの経済への反応を基調としながら、きちんと経済投票をおこなっている」(大村 2024、147)という日本の有権者に対する評価は楽観的に過ぎないか。経済政策の効果と実績を理解して投票行動に結びつけている有権者はどれだけいるであろうか。政府自民党の経済政策を中身でなくイメージで捉え、是認しているだけのように思えるが。
荻上チキ、2024、『選挙との対話』、青弓社。
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