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題名の印象とは真逆だろうか、怖ろしいものを覗いてしまった感覚にもなる。しかしおそらくは日本中のあらゆる職場でこの小説と似たような光景はみられるのだろう。自分の会社員経験からもそう思う。「尊敬がちょっとでもないと、好きで一緒にいようと決めた人たちではない職場の人間に、単純な好意を持ち続けられはしない」(高瀬 2022、19)。他人のことを知れば知るほど自分との距離が広がっていく。そんなアイロニーが散りばめられる。分かり合えなさは、時に暴走し攻撃的にすらなる。心の内面が描写されているのは主人公格の男女二人だけだが、会話と表面描写しかない他の人物たちの内面にもまた闇があるはずだ。それを知りつつ遣り過ごすのは疲れる。退職した今はそんな気苦労をすることはなくなったが。
高瀬隼子、2022、『おいしいごはんが食べられますように』、講談社。
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