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山崎ナオコーラ『ここに消えない会話がある』

会社の中の1つの島に席をおく20代の6人の会話で紡がれた小説。どこの職場でもあるような何気ない会話、大きな出来事も起きず、人間関係もいたって淡泊。とはいえ、低賃金で長時間労働を強いられる職場環境、正社員と契約社員の差異、に鬱屈する思いも垣間見える。不思議と読みごたえがある読後感。例をあげれば、次のような言葉が自分の心に留まる。

「『わかりました』で会話が終わるのは、妙だ。(中略) 本当は、その後に何かが続く科白のはずだ。しかし、続かないのである。わかり合えないことを認識し合ったかのように『わかりました』と言い合って、終了するのだ」(山崎 2009、59)。

「先に続く仕事や、実りのある恋だけが、人間を成熟へと向かわせるわけではない。ストーリーからこぼれる会話が人生を作るのだ」(山崎 2009、109)。

山崎ナオコーラ、2009、『ここに消えない会話がある』、集英社。

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