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山本昭宏『変質する平和主義──<戦争の文化>の思想と歴史を読み解く──』

1989年から現在まで35年間の、日本社会の「戦争と平和」をめぐる論考。ちょうど自分が会社員だった時期と重なる。毎日、テレビでニュースを見て、新聞を斜め読みしてはいたものの、この35年間、自分の「戦争と平和」観をアップデートすることはほぼ無かった。仕事に忙殺されていたことを言い訳に、社会から距離を置いていたような気もする。考えることをさぼっていた、という方が正確かも知れない。東西冷戦が終わり、グローバル化が求められる中、新自由主義が幅を利かせるようになり、自己責任論と、同時に歴史修正主義が跋扈した。「個人の「自己責任」が強調されると、各人の成功や失敗を何らかの社会システム上の問題として捉える見方は退潮する一方だろう」(山本 2024、120)。「歴史修正主義の物語には一定の「効用」がある。国民の歴史と自分自身を結びつけて、両者をともに肯定してくれるし、ときには自分を叱咤激励してくれる」(山本 2024、121)。「なぜそんなに「戦争と平和」は語りにくく、ややこしいのか。その理由は、「戦争と平和」が「諸個人の生死」と「集団の意思決定」の絡まりあう問題領域だからだ」(山本 2024、4)。

山本昭宏、2024、『変質する平和主義──<戦争の文化>の思想と歴史を読み解く──』、朝日新聞出版。

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