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柴崎友香『週末カミング』

映画『砂の器』

日本映画界屈指の傑作と名高い作品。初めて観る機会を得た。昔の映画はその当時の社会の空気を感じることもできて興味深い。この映画の物語の底流にはハンセン病差別の問題がある。公開された1974年は、未だ隔離政策が続いている時代だった。つまり社会全体にハンセン病への差別意識が残存していた時代であった。付け加えれば、旧優生保護法下で実施されていた優生手術の被害者補償の法律が成立したのは2019年とつい最近なのだ。そうした時代背景を考えると50年前の公開当時、この映画に喝采を送り涙を流した多くの観客はハンセン病差別の問題をどのように自らの心の中で消化させていたのだろうと少し不思議な心持になる。そして残念なことに50年後の現在においても、その差別意識が霧消しているわけでは決してない。

143分の長い映画だが最後まで緊張感ある多層的な展開で惹きつける。特に丹波哲郎の実直な刑事役と島田陽子の演技が印象深い。


監督:野村芳太郎、1974、『砂の器』
映画視聴日:2024年2月8日
映画館:新文芸坐

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