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「戦後民主主義」。戦後78年、この言葉は時に肯定的に時に否定的に論じられてきた。この言葉に対する評価の変遷はまさに戦後の日本の歴史そのものでもある。そして、自分が社会に目を向けるようになった10歳ぐらいの頃から61歳となった今に至るまで、考え方の中心にあり続けたのが「戦後民主主義」であったのだと得心した。その意味でこの本は自分の思想の原点を説明してくれる本であると感じた。であるから本は付箋だらけになってしまった。戦後まもなくから自分が10歳になるまでの間の思想についてはこれまで様々な媒体から断片的な知識を得てはいたが、この本で年月を追って理解することができた。その代表的な事柄の1つがGHQによる「ウォー・ギルト・プログラム」だ。
「太平洋戦史」と「真相はかうだ」が提示したのは、戦争を起こしたのは「軍国主義者」たちだという認識である。それは読者や聴取者が、自分たちは被害者だったと思うことを可能にした。戦争に関する自らの主体的関与を免責する機能があったため、敗戦に打ちひしがれた多くの人びとの耳に入りやすかった。さらに、侵略した国々への加害責任の意識を希薄にするものでもあった。(山本 2021、16)
1950年代までは護憲勢力の社会運動が活発だった半面、改憲論が世論の支持を集めていたことは意外だった。戦後の歩みが思想と文化の両面で明らかにされる。引用したい箇所は多いが割愛する。自分にとって今年読んだなかで最も有益な本。
山本昭宏、2021、『戦後民主主義──現代日本を創った思想と文化──』、中央公論新社。
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