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柴崎友香『週末カミング』

早乙女勝元『東京大空襲──昭和20年3月10日の記録──』

戦争の「加害者」である軍人よりも、戦争の「被害者」であるところの一般市民の被害のほうが増大するのは、現代戦の宿命なのだろうか。(中略) 世界戦史上、どんなに激烈な戦闘がおこなわれたところでも、わずか二時間余の短時間に、八万人をこえる兵隊が死んだという記録はない。その意味で、あの太平洋戦争下の”銃後”はまさに戦場であり、東京を中心とする六大都市は”最前線”だったと私は思う。(早乙女 1971、210)

本書は半世紀前に書かれたものだが、早乙女の指摘どおり、21世紀となった現在においても戦争被害は軍人よりも圧倒的に一般市民が被る。加えて、一般市民の戦争被害について政府の記録は極めて少ないのが現実だ。日本においては特にそれが顕著なのではないか。だからこそ、この本のような生き残った者たちの証言を集めることが重要なのだ。終章に「東京空襲を記録する会」を設立したことが記されている。その結実の1つが2002年の「東京大空襲・戦災資料センター」の開館であろう。東京大空襲を記録し、歴史を継承していく場ができた意味は大きい。しかし、この施設が東京都による公立ではなく、募金でまかなわれている民立民営であることもまた、考えさせられる現実である。 


早乙女勝元、1971、『東京大空襲──昭和20年3月10日の記録──』、岩波書店。


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