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星野智幸『焔』

2018年発刊の星野智幸の小説。舞台は近未来、おそらくは十数年後の日本。最後に生き残った8人が焔を囲んでひとりづつ物語を語るという連作短編。東京の最高気温が40度を超える日が続く、徴兵制、近隣国との戦闘、介護老人を処分するNPOなど、突拍子もないようで、実は近い将来に起きても不思議がないかもしれないディストピア。既に少しずつそんな世界に近づいているのかもと思わせる。


星野智幸、2018、『焔』、新潮社。

小説の内容からは離れるが、この作品は谷崎潤一郎賞を受賞している。谷崎潤一郎賞といえば、純文学の世界で中堅作家の名作と呼ばれるような作品が選ばれるという印象がある。大江健三郎『万延元年のフットボール』、吉行淳之介『暗室』、古井由吉『槿』、村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』...
ここに中上健次の名前が無いのはとても不思議だ。『枯木灘』、『鳳仙花』、『地の果て至上の時』どれをとっても谷崎潤一郎賞に相応しいと思うのだが。



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