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中沢啓治『はだしのゲン』

今年広島市の平和教育副教材から漫画『はだしのゲン』が削除されたというニュースが話題になった。皮肉なことに、このニュースをきっかけにこの作品に注目が集まり、再販もされた。自分もコンビニに置いてあるのを見つけて衝動買いしてしまったというわけだ。

『はだしのゲン』は1973年に週刊少年ジャンプに連載された。当時自分は小学5年生だったが、毎週ジャンプを買って読んでいた。『はだしのゲン』もよく覚えている。自分の原爆被害の知識とイメージはこの作品で獲得されたものだ。さらに言えば、自分の戦争に対する認識の原点ともなった作品かもしれない。

今回50年ぶりに再読して、細部の描写が実に丹念に調べられていることに驚いた。焼夷弾の絵はアメリカが日本用に開発した形状で描かれているし、原爆投下の爆撃機や爆弾の名称など正確だ。1970年代当時これらの史実を調べることは容易ではなかったはずである。

そしてこの作品の特徴は単に原爆を被害者視点で描くだけでなく、無謀な戦争に突き進んだ日本に対する批判が貫かれている点であろう。まさにこの点が保守系の人たちの反発を招き、教材からの削除につながったのではないか。


中沢啓治、2005、『はだしのゲン』、集英社。



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