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山本昭宏『変質する日本の平和主義──戦争への想像力をいかに補うか──』

月刊誌『中央公論』2023年9月号に掲載されていた山本昭宏の寄稿記事がとても示唆に富んだ内容だったので、備忘録として気になった箇所を引用する。

この寄稿は、「戦争が変える世界秩序──ウクライナの戦禍から考える」という特集での各専門家たちによる寄稿記事のなかのひとつ。山本は1984年生まれ、メディア文化史・歴史社会学を専門とする神戸市外国語大学の准教授。戦後史研究者の視点からみた大江健三郎の評伝の著作もある。

日本の平和主義の特徴として以下の点を挙げている。

戦争の反省と生活保守主義とが結びついて、反安保や反核運動へと流れ込んだところに、戦後日本の平和主義の最大の特徴がある

日本社会は平和に対する態度決定を、ひたすら戦争体験者に頼ってきた

戦争放棄という理念が活性化した最大の理由は、多様な戦争体験を持つ分厚い層にある

しかし現在その平和主義が変質してしまっている。戦争体験者に頼ってきた平和主義をどうやって補い、持続させていくことができるのか。戦争当事国の一方を支援するとか、核を含む国際的なパワーバランスに依拠した政策ではなく、以下のように考えていくことが必要なのではないかと述べている。

国家が起こした戦争による死者を追悼することで、過去と現在を問い直す

国家の決定によって人が人を殺さねばならない状況が生まれること──すなわち戦争に対する根本的な違和感である。そして、その違和感を多様なルートを通じて表明すること


山本昭宏、「中央公論」2023年9月号、『変質する日本の平和主義──戦争への想像力をいかに補うか──』、中央公論新社。



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