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池袋文芸坐で1967年の『日本のいちばん長い日』を観た。終戦の日特別企画として上映されたものだ。
1945年8月14日のポツダム宣言受諾決定から、翌8月15日正午の昭和天皇による玉音放送までの24時間を描いた実話ドラマ。冒頭に戦況説明のナレーションが入るが映画の導入として効果的。2時間半を超える大作、結末は分かっているにも関わらず緊張感漲る展開で魅せる。
しかし戦争の描かれ方には疑問を抱いた。この時期、日本中が狂気に覆われていたことはよく分かる。特に軍人たちが皆合理的で理性的な判断ができなくなっており狂信的な行動を繰り返すことも事実であろう。特に畑中健二少佐(黒沢年男)の終始白目を剝いた言行は愚かさの極地だ。一方で、切腹で自害する阿南惟幾陸軍大臣(三船敏郎)をヒロイックに描きすぎていないか。狂気という意味では畑中も阿南も同じだ。しかもこのような狂気を日本中に猖獗させた直接の張本人は阿南をはじめとした戦争指導者たちではないのか。
この映画が上映された1967年当時はまだ戦争体験者も少なくなかったはずで、しかもこの映画の出演者もまた多くが様々な形での戦争体験者だったはずだ。だが、戦後20数年を経過して日本全体が平和を享受するなかで、戦争の記憶が徐々にうすれ始め、場合によっては美化する空気が醸成されてきた時期だったのではないか。そんなことを考えた映画だった。
監督:岡本喜八、1967、『日本のいちばん長い日』、東宝。
映画視聴日:2023年8月10日
映画館:新文芸坐
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