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柴崎友香『週末カミング』

長崎原爆資料館

 去年の夏は広島に行った。それまで原子爆弾の被害については見知っているという気になっていた。しかし実際に広島平和記念資料館に入って展示を見ていくと、被害の甚大さと問題の深刻さをまざまざと見せつけられ、今まで見知っていると思っていたことは、ほんの一部に過ぎなかったと痛感させられた。そして今年は長崎に行った。


長崎原爆資料館は規模こそ広島平和記念資料館には及ばないが展示は充実していた。広島の展示は被爆者個々のナラティブを見せるという点に力点が置かれていると感じたが、長崎の展示は被害の実相を遺構や写真から淡々と示していると感じた。どちらが良い悪いということではないが、全体的に広島の展示は抑制的な印象があるのに対し、長崎では被爆者のケロイドとなった写真がいくつかカラーで展示されているなど、見ている自分を否応なく核問題の深みに引きずり込む。

資料館を出て隣接する平和公園に行くと、平和祈念像の周りは8月9日の平和祈念式典の会場準備で工事がおこなわれていた。その平和公園の敷地の隅には防空壕の跡があった。日本全国、開発によって過去が塗り替えられていくなかで、このような78年前の戦争の痕跡を遺している意味は大きいと思う。


長崎の街にはキリスト教信仰の歴史の跡をあちこちに見ることができる。戦争とは直接関係はしないが、日本二十六聖人記念館も訪れた。16世紀末に秀吉命で処刑された26名の殉教者の記念碑と関連する展示がされている。理不尽さという意味では原爆も殉教と通じるものがあるのかなとも思った。



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