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柴崎友香『週末カミング』

戦場体験者の話を聴く

7月15日、浅草公会堂で開催された『戦場体験者と出会えるお話し会』に行ってきた。テニアン、パラオ、シベリア抑留、満州引揚、義勇軍、東京大空襲、原爆など10数名の体験者の方がそれぞれ90分ほどお話をされるイベント。当然ながら話者は80代後半から90代後半の方々ばかりだ。

自分は中国で3千キロの行軍を経験された98歳の方の話を聴いた。陸軍の歩兵として中国に派兵され作戦命令により3千キロの行軍をしたという。日本軍の特徴としてよく言われることだが兵站が全く考慮されていないため、食料の補給が無い。「徴発」と言っていたが民家に銃剣を持って押し入って食料を取り上げることを繰り返しやらざるを得なかった。最初は罪悪感があったがそのうち慣れてしまったという。この方は幸いにも戦闘に巻き込まれることは無かったそうだが、厳しい行軍の途中栄養失調で何人も死んでいったそうだ。98歳になっても当時の記憶は鮮明に浮かぶのかついこの間のことのように話す姿が印象的だった。やり場のない無念の気持ちが生々しく残っているのだろうか。

行軍に中国人の苦力(クーリー)を同行させていたというのは驚いた。生きるためとはいえ日本軍に協力をしていたのだから。戦争の混沌、理不尽、残酷さが詰まった話だった。戦後78年。こうした体験者からの話を直接聴く機会は確実に失われる。




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