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ブックレットなのでとても短い論文ではあるが、宇田川の語る問題意識や主張に首肯することばかりだった。それは以下の文章に集約されている。
戦争体験者の減少と、記憶の継承の不充分さという事態は、これまで日本社会を支えてきた「悲惨な戦争体験に依拠した平和主義」の一角が、地盤沈下しつつあることを示唆しています。日本の平和主義を再構築していくためには、戦後の日本政治・社会が、近代日本の戦争や植民地支配について、何を記憶し、何を忘却してしまっているのかを検証し、戦争の忘却に対して歯止めをかけてゆくことが不可欠になります。(宇田川 2023、4)
そして今まで自分が見落としていた以下の視点にも気づくことができた。
日本の戦争で最も大きな被害を受けたのはアジアです。にもかかわらずアジアの声が無視・軽視され、アメリカやイギリスなどの欧米諸国の意向が優先される―そしてこれを日本側も利用してゆく―という構図が、東京裁判や日本の戦後処理に持ち込まれてゆくことになるのです。(宇田川 2023、10)
宇田川は1985年生まれ。宇田川のような真っ当な視点をもった若い研究者がいることは希望である。そしてこの本を今の10代20代の若い人たちに広く読んでほしいと思った。
私たちと戦後責任
──日本の歴史認識を問う──
宇田川幸大、2023、『私たちと戦後責任──日本の歴史認識を問う──』、岩波書店。
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