日本軍兵士がおこなった中国や東南アジアでの加害行為、そこに暮らす人たちはどのように語り継いでいるのか。この視点での本は少ないのではないか。でもそこを理解しようとしなければいくら反省を語っても自己満足の域を出ない。マレー半島侵攻においては多くの中国人を虐殺した。マレーシアやシンガポールの中高生はこの歴史を詳しく学ぶという。かと言ってそのことで人々の日本への好感度を下げるわけではなさそうだ。「許そう、しかし忘れまい(Forgive but never forget)」。シンガポールでよく耳にするスローガンだそうだ。台湾では「犬去りて豚来たる(狗去猪来)」という言葉がある。敗戦で日本は出ていったが大陸から国民党が支配するようになったことを表す。文化大革命期の中国では残留日本人は「東洋鬼子」と呼ばれ差別を受けていた。養父母の葛藤と苦難は想像に難くない。日本ではこうした歴史を学ぶこともなく多くは知らないままだ。これで理解し合えるわけがない。満州から引き揚げ者である小澤征爾。征爾は満州事変の首謀者である板垣征四郎と石原莞爾から一字ずつとって付けられた命名された名前だった。当時の日本人は満州をどう見ていたのか、戦後はその存在すら忘却してしまったかのようだ。様々考えさせる一冊。
山下清海、2023、『日本人が知らない戦争の話──アジアが語る戦場の記憶──』、筑摩書房。

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