特攻隊として出撃した学徒兵大貫健一郎の証言と、渡辺考による証言解説が交互に編まれ、特攻作戦の一部始終が立体的に立ち上がり、今まで得てきた知識の解像度が上がる。マリアナ沖海戦におけるVT信管付対空砲弾などの兵器で「マリアナの七面鳥撃ち」と呼ばれた米軍の攻撃。それにより日本軍の戦闘機が壊滅状態となる。そこで次なるレイテ沖海戦前に編み出された特攻。発案した大西瀧治郎中将は、作戦を知れば天皇が戦争そのものを止めるのではという期待があったという。しかし天皇は「しかしよくやった」と評する。そのため特攻を継続するより他無くなる。そのうちに「特攻隊=華々しい戦死」という図式が優先し、攻撃による戦果より死ぬこと優先の倒錯に支配される。だから不時着などで帰還した特攻兵を幽閉する「振武寮」ができたのだ。「振武寮」は映画『月光の夏』で描かれていたものだ。実に読み応えのある一冊。さらに、あとがきで大貫健一郎の娘があのミュージシャン大貫妙子さんであることが明かされる。大貫妙子は父の戦争体験が音楽に与えた影響はないと語るが、「平和を希求する心は、違う形で父親から娘にバトンタッチされているのだと思った」(渡辺 2018、338)と渡辺は語る。
大貫健一郎・渡辺考、2018、『特攻隊振武寮──帰還兵は地獄を見た──』、朝日新聞出版。

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