この映画はドキュメンタリーなのだろうか。タイトルにあるように彼女自身の Diaries 、私小説もしくはモノローグと呼ぶ方が相応しいと感じる。ジャーナリストとして自分を外側から見ることで、かろうじて自分を保つことができた。映画のなかで彼女自身がそのように語っている。性暴力被害者である彼女は、警察に事件をもみ消され、記者会見で声を上げれば誹謗中傷を受け続ける。逆に加害者から名誉棄損で訴えられる。ジャーナリズムも事件を積極的に報じようとはしない。こんな理不尽があるだろうか。彼女が自分を取り巻くあらゆる人間(支援者や弁護士に対してでさえ)に対して不信感を抱くのは当然の帰結に思える。この映画に関して「映像や音声について使用許諾を得ず使用している」などと批判が絶えない。その批判は紛れもない正義正論なのだろう。それでも彼女がこの映画を作り、公開したかった動機は痛いほど伝わる。その告発は、正義正論を振りかざし、被害者を容赦なく叩く、今の社会に向けられている。
監督:伊藤詩織、2024、『Black Box Diaries』
映画視聴日:2026年2月10日
映画館:Kino cinema新宿

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