映画『ゆきゆきて、神軍』

帰還兵奥崎謙三を追ったドキュメンタリー。所属していたニューギニアの部隊で終戦23日後に起きた兵士処刑の真相を、当時の上官を訪ね回り追及していく。上官たちはいずれも真実を語ろうとしない。人間は過去の自らの蛮行を正当化したり美化したり嘘をつき都合よく忘却する。奥崎は時に暴力を辞さず執拗にそれを問い詰める。そうした彼の行動は狂気に満ちている。しかし、戦時中の罪を告発しようとしているのではなく、戦争を繰り返さないために自分の体験を語る必要があるのだ、と彼は言う。悍ましい戦地での体験を伝えることこそが戦争を止めることができるという信念であろうか。この映画が撮られた80年代は戦地での悲惨な体験をした兵士たちが未だ存命だったのだなとも思う。今では叶わないことでもある。

監督：原一男、1987、『ゆきゆきて、神軍』

映画視聴日：2024年3月9日

映画館：アップリンク吉祥寺