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柴崎友香『週末カミング』

映画『めくらやなぎと眠る女』

村上春樹原作の映画は何本も作られているようだが、自分が観たのは処女作を映画化した1981年の『風の歌を聴け』だけだった。小説の映画化は原作の持つ印象との相違に失望を感じることがある。この作品は、80年代から90年代に書かれた6つの短編を元に作られたストーリー。今回映画を観る前に原作を再読していった。阪神大震災のところが東日本大震災になっているなど原作との設定上の違いはあるが、作品全体の世界観は原作に忠実だ。現実と夢の交差、人と人との分かり合えなさ、登場人物たちを苛む孤独、原作と同じように、深い余韻に浸ることのできる映画になっていた。アニメーション映画であるが故に成功した面が大きいのではないか。余談だが、欧米から見えるアジア人の顔のイメージはこんな感じなのだなと思った。日本人が描いた絵だったら、本作のような味わいは望めなかったであろう。


この映画の日本語版演出は映画監督の深田晃司さんが担当している。深田さんは自分も参加していた炊き出しボランティアで何度か一緒に作業をおこなったことがある。世界的な映画監督であることをおくびにも出さず、黙々と作業をする姿に敬服の外はない。

監督:ピエール・フォルデス、2022、『めくらやなぎと眠る女』
映画視聴日:2024年7月30日
映画館:グランドシネマサンシャイン池袋

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